遠隔情報保障システム[T-TAC Caption]の運用状況について
執筆:三好茂樹([情報保障]担当)
今回は私が開発を担当した遠隔情報保障システム「T-TAC Caption」の利用状況について触れさせて頂きたいと思います。ノートテイクでは通常、教室の中にノートテイカーと利用学生がいて授業の間発話内容を文字にして利用学生に伝えます。一方、遠隔情報保障システムであります「T-TAC Caption」では、学内LANやインターネットを介して音声・映像・文字情報等を、利用学生が持つタブレット端末と複数のノートテイカーの間でやり取りします。当然、現地で見聞きしながら行う情報保障の方が環境音等を伝えやすいというメリットが大きいですが、このシステムでは教室内にノートテイカーがいる必要性を無くすことが出来るために、それによって、従来までは難しかった様々な運用上のメリットをもたらします。すべての方々や組織に向いたものではございませんが、電波の届く範囲であれば歩きながらでも利用できるような特性も活かし、高等教育機関では各大学のキャンパス間での支援学生のシェアなどにご利用頂いています。
このシステムは数年前に東京都内の一般の高等学校での利用を念頭に置いて開発・改良を始めたシステムです。従来のものよりも機器セッティングなどの準備が簡単で且つトラブルも少なくなることを目標に取り掛かりました。今では、東京都内や京都府内などの学外初等中等教育機関8校にて、聴覚に障がいのある生徒さんが受ける「国語」などの教科で昨年度約2、100コマ(1コマ50分)の利用となりました。また、本学を除く高等教育機関12校にて「西洋建築史」等の講義で昨年度約1、500コマ(1コマ90分)となりました。その他、学外見学、学年集会等、入学式・オリエンテーション、教育実習やゼミ合宿などでの利用を合わせると、昨年度の合計利用時間は約4,000時間を実現しております。聴覚に障がいのある生徒・学生さんの総数は初等中等教育現場そして高等教育現場合わせて40名以上となります。
このような遠隔情報保障システムや情報保障システム全般に関しまして、ご興味・ご関心のある方は是非一度、本事業の事務局までご連絡下さいますよう、よろしくお願い致します。内容に応じて私以外の専門家とも協議しつつ、ご返答・ご対応させて頂きたく思います。