聴覚障害学生に対する語学教育
執筆:松藤みどり([語学教育に関するアカデミック・アドバイスの提供]担当)
近年、大学の語学教育は二極化していると言われます。高校で身につけた能力に更に磨きをかける取組みとして、英語で専門科目の授業を行ったり、海外研修に積極的に送り出したりするような教育と、中学の英語からやり直さなくてはならないような学力の学生を抱える教育です。また、英語以外の外国語については、履修できる大学と、第二外国語は必要なしとして全く開講しない大学があります。
日本学生支援機構の調査によれば、聴覚または言語に障害をもつ大学、短大、高等専門学校に在籍する学生は、平成18年には1200人、平成23年度には1556人、28年度は1917人と、増加傾向にあります。進学する聴覚障害学生の中にも高度な内容を求め、外国語でディスカッションに参加できるような力のある学生もいれば、基本的な文法力や語彙力が身につかないまま入学する学生もいることが想像できます。また、聴覚障害以外の障害を併せ持つ学生も増えています。語学の支援も、学生の多様性に応じた方法が求められてきています。
9月9日に筑波大学東京キャンパス文京校舎で実施するシンポジウム「聴覚障害学生の語学教育のイコールアクセスを考える」では、当事者による体験発表が二件あります。一件は英語のみならず第二外国語も履修している学生、もう一件は大学院で学ぶ盲ろうの学生によるものです。
この他、英語を指導している教員や支援担当教員から、支援学生からのフィードバックも含めた報告がなされる予定です。熱い議論が展開されることを期待しています。