視覚障害学生が履修可能な科目は?
執筆:宮城愛美([視覚障害学生の修学支援]担当)
毎年、年度が切り替わる時期に、視覚障害学生の科目履修についてご相談があります。
第二外国語の履修については、フランス語、ドイツ語などの一般的に人気のある(?)言語は、対応可能な点訳グループがあります。語学の学習に欠かせないのは辞書ですが、それらの言語については点字端末上で使用できる点字辞書も販売されていますので、比較的履修しやすい環境があるといえます。難しいのは、対応可能な点訳グループも見当たらず、点字辞書も入手できないような言語の履修です。先日も、そのような言語の履修について相談があり、偶然、点訳可能な方を探すことができましたが、見つからなければ履修できなかったかもしれません。テキストデータを使って音声で学習するスタイルを基本とする視覚障害学生も増えてきましたが、初めて触れる言語を音声だけで履修するには限界があります。点字による学習資料の不足を感じる場面です。
また、絵画や書道の履修についてもお問合せがあります。視覚障害者がそれらの科目を学習する、確立された方法は恐らくありませんので、手探りで検討していくことになります。全盲の学生であれば、可能な限り触れて体験して、視覚的な情報は何らかの方法で補足していくのが基本です。作品の立体コピーを作成して触れてもらう、教員やTAが手取り足取りして指導する、などの方法があるでしょうか。
以上のように、視覚障害学生が履修するための環境や方法が十分整っていない科目がありますが、方法を開拓していった大学の事例もありますので、まずは検討することから始めていただければと思います。
授業の中でのコミュニケーション
執筆:宇都野康子([情報保障]担当)
授業が始まって、1ヶ月経ちました。情報保障の方法、支援者の配置など、そろそろ一段落した時期でしょうか。
本事業の一環とした取組で養成したパソコンノートテイカーは、本学の産業技術学部1年生が受講する講義の情報保障支援も担当しております。毎回の講義終了時に授業の感想などを書くリアクションペーパーを提出しています。その中には、情報保障(パソコンノートテイク)に関する要望が書かれることもあるようです。翌週の講義の冒頭に、前回の学生からのコメントや感想が読み上げられることもあります。ある回のコメントに「話が速くて字幕の情報も多
くなるため、字幕を読むのが追いつかないので、もう少しゆっくり話して欲しい」と書かれていたそうです。
初回の授業の時に、リアクションペーパーには授業の感想のほかに、分かりにくいところなどについても書いてください、とおっしゃった先生は、コミュニケーションツールとしてもリアクションペーパーを活用しているのかなと思いました。
本学の学生も、これから様々な情報保障支援を受けていくことになります。今後も、今回リアクションペーパーに書いたように、自身のニーズを把握し、配慮を求める力を養っていってもらいたいです。
また、今回の授業を担当した先生のように、学生からの意見にも耳を傾けてくれるという、双方向のやりとりの積み重ねが、建設的な対話につながっていくのかもしれません。