キャリア発達支援
執筆:宇都野康子([キャリア発達支援]担当)
9月8日~9日の2日間、本学に事務局を置くPEPNet-Japanが主催する「第12回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム」が、本学とつくば市内のホールを会場として開催された。このシンポジウムでは、毎回多くの学生が準備や当日のスタッフとして携わっている。前日までの準備では、参加者に配付する冊子のデザインを本学の総合デザイン学科で学ぶ聴覚障害学生が担当し、またシンポジウムを運営する教職員の指示を受けながら機材の準備や会場の設営等を担当していた。シンポジウム当日には、本学の学生だけではなく、近隣の大学で学ぶ聴覚障害学生を含む多くの学生が業務を担当してくれた。
障害の有無や程度に関わらず、業務として仕事を担う。これは、学生たちにとって、貴重な「社会的な経験・体験」となる。ほとんどの大学では、障害学生に限らず、職業移行プログラムとして、インターンシップが取り入れられているが、職業観などは短期的な就業体験だけで身につくものではない。「キャリア教育」とは、単に就職を考えるだけではなく、卒業と就職後を見据えて指導・支援をしていくことであり、大学に在籍している4年間をとおして培われていくものである。
指示を受けながら、自らも「今、自分が何をすべきか(できるか)」を考えて行動すること。この活動を通して、与えられた持ち場で主体者となり、業務の一連の過程を体験する。彼らにとって貴重な体験の機会となるであろう。学外でのアルバイト等が難しい場合でも、学内でできるボランティア活動などもある。そのような機会があれば、積極的に参加し、多くの経験を蓄積することで、社会人としての基礎力を培ってほしい。
視覚障害情報保障機器の評価
執筆:飯塚潤一([視覚障害情報保障機器の評価]担当)
視覚障害の情報入手には、情報保障機器が非常に有益です。弱視者向けには、印刷物が明るく見えるLED付き『手持ちルーペ』や、遠方のものを見るための小型軽量の『単眼鏡』、拡大倍率を自由に変えられ白黒反転もできる『拡大読書器』などがあります。拡大読書器には教科書を読むための“据置型”だけでなく、バッテリー内蔵の“携帯型”などさまざまなものがあります。全盲者向けには、合成音声でパソコン画面を読み上げる『スクリーンリーダー』、点字で表示する『点字ディスプレイ』、印刷物を読取り・読み上げる『音声読書器』などがあり、独力で文章を作成したり、メールやインターネットを読んだりすることができます。この他に眩しさを低減する『遮光眼鏡』、足元を照らす高輝度『懐中電灯』などあります。本学では勉強や日常生活に役に立つ機器・グッズを約400製品所有しており、日本最大規模ではないかと自負しています。
日本学生支援機構の2015年の調査によると、全国の大学・短大・高専で学ぶ視覚障害のある学生は755人にも上っています。一般大学では様々な障害のある学生を支援していることもあり、こうした機器を十分に揃えることは難しいと考え、本学が所有するすべての情報保障機器を貸出しています。実際の教育現場で機器を使ってみて、視覚障害学生の就学環境を向上していただきたいと思います。是非、ご利用ください。